夜逃げ小学生1

夜逃げ小学生1

「今日の夜みんなで家を出るぞ!」
オヤジがまた変な事をいっている。
俺のオヤジは商売人で、借金の天才だった。
全盛期は15個も会社をやって、今の紙幣価値で
何百億も儲けたというが、そんな姿は知らない。

俺が生まれてからは
いつも借金とりに取り立てられている、
家族にとって、とても困ったオヤジだった。

オヤジは、その日、えらく真剣だった。
冗談と思っていたら、オカンも荷物をまとめはじめている
「よしなり も早く荷物まとめるんやで」
オカンも真剣だった。

その時俺は小学校3年生。
神戸の小学校に通っていた。
家は貧乏だったが、3食ちゃんと食べれたし、
今考えると
神戸は美しい街で、とっても住みやすかった。

当時バースに岡田、掛布といった阪神タイガース黄金時代。
俺もタイガースの帽子をかぶって、野球メンコなんかであそんでいた。

「本当に引っ越すん?」
どうやらこれは本当らしい。
そう思ったとき一番につらかったのは、
ともひろ君に別れを告げていない事だった。
彼は、親友だった。

ピンポンダッシュ
野球で窓ガラスを割る
女の子をいじめる
一緒に学校に遅刻する

彼とはたいていのワンパク小僧的な事をやった。
今考えるとなんだか凄く楽しい小学生3年生だった。

「よしなり君おるー?」
玄関から、ともひろ君の声がする。
『そういえば夜ゲームしようっていってたんや・・・』

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